CADオペレーターの報酬形態3パターン|私が時給制を選ぶ理由とフリーランス新法

CADフリーランス

信頼関係だけで仕事を受けていませんか?

「請求書だけ送ってください」
「契約書は特にないけど、これまで通りで」

CADフリーランスとして案件を受けていると、よくある会話です。実際、私も大手ゼネコンを除く3社はメールでのやり取りのみで受注しています。

信用している取引先ばかりなので、支払いで困ったことはありません。月末締翌月末払いで、遅れは一度もなし。

でも正直に言うと、別の悩みがあります。

私の本音:単価を上げたいけど言い出せない

インフレで物価はどんどん上がっている。
電気代も上がった。生活費も上がった。

それなのに、独立当初から一番仕事をもらっている会社(ダクト屋さんからの紹介で始まった付き合い)は時給2,800円のまま。本音では最低でも時給3,200円にしたい。

でも、言い出せません。

  • 独立当初から仕事をくれている会社
  • 支払いも一度も遅れたことがない
  • 仕事を切られたら困る
  • 「値上げ交渉」って角が立つ気がする
  • 付き合いを壊したくない

これ、私と同じCADフリーランスの方なら、めちゃくちゃ共感してもらえると思います。

CADオペレーターの報酬形態は主に3パターン

CADフリーランスを目指す方に知っておいてほしいのが、報酬形態の違いです。

主に次の3つがあります。

① 成果物報酬(図面1枚いくら)

  • 「平面図1枚○○円」「アイソメ1枚○○円」など
  • 発注側にとっては分かりやすく、予算が立てやすい
  • 条件が良い物件ならフリーランス側も効率よく稼げる

② 時給制

  • 作業時間×時給で計算
  • 複雑な物件・設計図が不明瞭な物件でも時間に応じて正当に請求できる
  • 発注側は時間が見えないので、信頼関係が必要

③ 一式(プロジェクト単位・月額契約)

これがちょっと複雑で、さらに細かいパターンがあります。

■ 常駐型(月額固定)

  • 1つの現場・会社にほぼつきっきり
  • 月額30万〜50万円くらいが相場
  • 契約期間は3ヶ月〜半年単位
  • 「準社員」に近い働き方で、会社のPCを使ったり出社するケースも

■ プロジェクト単位

  • 「この現場の施工図一式で○○万円」
  • 規模・期間で見積もり、完了時に一括 or 段階払い
  • 途中で作業が増えても追加請求しにくいのがデメリット

■ 月額固定(在宅・他案件OK)

  • 月額で契約するけど在宅で並行して他の案件もできる
  • 月○○時間までの稼働を保証する形

建設業界では、ゼネコンや大手サブコンが「忙しい時期だけCADオペレーターに常駐してほしい」というニーズで、月額一式で契約するケースがよくあります。

なぜ私は「時給制」で仕事を受けているのか

私は現在、すべての取引先と時給制で契約しています。

理由はシンプルで、施工図は実際に手を動かしてみないと、どれくらい時間がかかるか分からないからです。

施工図は「設計図だけ」では作業時間が読めない

例えばこんなケース:

  • 建築・躯体の収まりが悪い → 梁を避けたルート変更、納まり検討に何時間もかかる
  • 機械設備の設計図が不明瞭 → 自分で確認、質疑、回答待ちをしながら進めるので時間がかかる
  • 設計変更が頻発する → 何度も描き直しが発生する

設計図が完璧で、条件がクリアな物件なら成果物報酬でも問題ありません。でも施工図の現場ってそんなに綺麗じゃないですよね。

図面1枚いくらで請けると、条件が悪い物件ほど実質時給が大暴落します。現場監督時代に「ここの納まりどうする?」と協力業者と何時間も打ち合わせしてきた経験があるからこそ、時給制を選んでいます。

時給制は発注側に嫌われやすい

ただし、正直なところ時給制は発注側に嫌われやすいです。

「本当にその時間働いてるの?」
「サボって時給を稼いでいないか?」

発注側からすると、作業時間が見えないので不安なんですよね。だから時給制を受け入れてくれる取引先は、信頼関係がある相手に限られます。

裏を返せば、時給制で契約できている=信頼されている証拠。これまで真面目に納品してきた積み重ねが、契約形態に表れているとも言えます。

実はフリーランスは法律で守られている

ここから大事な話。

2024年11月1日にフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、通称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)が施行されました。

これは何かというと、発注者がフリーランスに仕事を頼むなら、ちゃんと書面で条件を明示しなさいという法律です。

「お願い」ではなく法的な義務。知らないと損する話なので、ポイントだけサクッと整理します。

フリーランス新法で発注者に課された主な義務

  • 業務内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法(メールでもOK)で明示
  • 成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間内での支払い
  • 発注後の一方的な報酬減額の禁止
  • 不当な受領拒否・やり直しの禁止
  • ハラスメント相談窓口の整備
  • 6ヶ月以上の契約を中途解除する場合は30日前までに予告

違反すれば、公正取引委員会や中小企業庁から指導・勧告・命令の対象になり、命令違反や検査拒否には50万円以下の罰金が科されます。

支払期日を定めなかったら「受領日=支払期日」

これ、意外と知られていない重要なポイント。

支払期日を定めなかった場合、成果物を受領した日が支払期日とみなされます。つまり「その日のうちに払え」と解釈される可能性があるということ。

発注時に支払期日が明示されていない場合は、発注者にとってもリスクが大きいので、ちゃんと書面に残しておく意識が大事です。

「メール契約」でも実は有効

私自身、大手ゼネコン以外の3社は契約書を交わしていません。でも、メールのやり取りは全部残しています

これ、実はフリーランス新法上は問題ありません。電磁的方法(メール)での明示でもOKだからです。

ただし、メールの中に以下の6項目がちゃんと書かれていることが大事です。

発注時に必ず確認しておく6項目

  1. 業務内容:図面の範囲、図面枚数、用途、使用CAD(Tfas/Rebroなど)
  2. 成果物の形式:ファイル形式、受け渡し方法
  3. 報酬額と算定方法:時給制か、図面単価か、一式か
  4. 納期:初回提出日と最終納品日を分けて
  5. 修正回数と納期への影響:修正が発生した場合、他案件との兼ね合いで納期をどう調整するか
  6. 支払期日:「月末締翌月末払い」など具体的に

時給制の場合、金額的には修正も時給が発生するので「修正で損する」ことはあまりありません。ただし問題は工程管理です。

個人事業主は複数の物件を並行して進めていることがほとんど。そこに急な修正が入ると、他案件の工程がぐちゃぐちゃになります。

「明日までに修正入れてほしい」と言われても、他案件の納期が迫っていれば物理的に無理なケースも。

だから修正依頼が来る想定で、「修正の納期は相談ベース」ということを最初に伝えておくのが大事です。図面単価や一式で受けている場合はさらにシビアで、修正回数の上限を決めておかないと実質時給が大暴落します。

「単価を上げたい」を切り出す3つのコツ

ここが私も一番悩んでいるところなので、同じ悩みの方向けに共有します。

① 根拠を持って伝える

「なんとなく上げたい」では角が立ちます。でも、根拠があれば話は違います。

  • インフレで生活費が上がっている
  • 他の会社の相場は時給3,500円〜4,000円
  • 使用CAD(Tfas・Rebro)は市場価値が高い
  • 自分の経験年数が上がっている

こういう客観的な事実を添えるだけで、お願いではなくビジネスの話として伝えられます。

② タイミングを選ぶ

大型案件が終わったタイミング、年度替わり、新規案件の打診時などは切り出しやすいです。逆に忙しい時期や失敗した直後は避けるべき。

③ いきなり3,200円ではなく段階的に

「2,800円→3,200円」は14%のアップ。相手にとってはインパクトが大きいです。

まずは「3,000円」で打診してみる。承諾されたら半年後に「3,200円」を目指す、という段階的アプローチの方が通りやすいこともあります。

相談できる窓口を知っておく

いざトラブルが起きた時、どこに相談していいか分からない状態だと、ほとんどの人は飲み込んで終わります。

無料で相談できる窓口を、スマホに登録しておくだけでもお守りになります。

フリーランス・トラブル110番(第二東京弁護士会・厚生労働省委託事業)

弁護士に無料で相談できる、国が委託している公式の相談窓口です。

  • 電話:0120-532-110(フリーダイヤル)
  • メール:help@freelance110.jp
  • 公式サイト:https://freelance110.mhlw.go.jp/
  • 受付時間:平日9:30〜16:30(完全予約制)
  • 特徴:匿名相談OK・秘密厳守・和解あっせん手続きまで対応

ただし、相談員の弁護士が直接の代理人になったり相手方と交渉したりすることはできません。その場合は別途、弁護士会や法テラスを紹介してもらう形になります。

下請かけこみ寺(中小企業庁委託)

  • 全国48ヶ所にあり、対面相談もしやすい
  • 弁護士による無料相談・ADR(裁判外紛争解決)対応

公正取引委員会・中小企業庁

フリーランス新法違反が疑われる行為については、ここに申告できます。相談者の情報は原則として発注者に伝えずに調査する運用になっているので、匿名で情報提供も可能です。

「相談したら取引を切られるのでは」と不安になる方も多いのですが、フリーランス新法では報復措置を明確に禁止しています(新法6条3項・17条3項)。これを理由に契約解除されたら、それ自体が法律違反になります。

今日からできる具体的なアクション4つ

  1. 発注時のメールに6項目が書かれているか確認する(足りなければ返信で追記依頼)
  2. 支払いカレンダーを作る(案件ごとに検収日と支払期日を管理。1日遅れたら即連絡)
  3. フリーランス・トラブル110番の番号(0120-532-110)をスマホに登録
  4. 単価交渉のタイミングを決めておく(年度替わり、大型案件完了時など)

まとめ:信頼関係があっても、仕組みは整えよう

契約書や書面のやり取りって、「信頼してないみたい」で気まずい気がします。

でも実際は逆で、条件が明確な関係の方が、長く気持ちよく付き合えるんです。

私自身、取引している会社はどこも信頼できる相手ばかり。だからこそ、単価の話もちゃんと切り出して、お互い納得できる関係を続けたい。

信頼は信頼として、法律と仕組みは仕組みとして使う。これが、CADフリーランスとして長く生き残るための現実的な答えだと思います。

単価交渉、私も今年やります。うまくいったらまた報告しますね。

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タケ|サブコン現場監督11年7ヶ月を経てCADオペレーターとして独立4年目。独立後にシングルファザーとなり、仕事と育児を両立中。固定費削減を実践しながらフリーランス生活を継続中。

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